勘、スピード、遊び心の価値を日本人は軽視しすぎ

お疲れさまです。

窓際投資家です。

以前の記事で少し触れたのですが、私は

「何となくこの銘柄イケそう」

という感覚を結構大事にして投資してます。

今日は

勘とか、

適度ないい加減さとか、

遊び心とか、

決断のスピードとか、

そういうものの価値について、記事を書こうと思います。

これは投資に限った話ではなく、ビジネスやスポーツやその他人生のイベント諸々にも通じる話じゃないかなぁ。

「全員納得の新規事業」が全滅するわけ

当ブログに張り付いている奇特な人はご存じでしょうけど、私は20代のころ民間にいました。

典型的な「ゆるブラック企業」「パープル企業」と言われるような会社です。

私が入社する少し前まではホワイト企業だったらしいですが、主力事業の稼ぎが段々先細りになってジリ貧になり、次第にゆるブラック化してしまっていた感じですね。

でまぁ…社長から下っ端までそんなことは分かっていたので、新規事業を何とか育てようとはしてました。

だけど、全然上手く行ってなかったんですよね。

プロジェクトの進め方もぱっと見は問題なさそう…というか、凄い堅実なやり方してました。

ここらはどこの会社でのやってる話でしょうけど、

新規事業の案が出てきたら、関係する部署や偉いさんに内容や見込みを説明します。

それで、みんなで話し合ってやるかやらないか決めていく感じです。

私の元勤務先の特徴はというと、この時の審査がやけに厳しかったことでしょうか。

新規事業の言い出しっぺは、「確実に儲かるのか」という部分を色んなところから根掘り葉掘り質問され、市場調査の結果なり、技術的なデータなりを根拠としてモリモリ求められていました。

そこで、社内全員納得!となったときに、GOがかかるわけです…

これだけ聞くと、そんな問題あることやってないように思います。

むしろ、しっかりしてるやん!と。

だけど、私が知る限り、その後全滅してるんですよね。

モノになった事業なんて一つもありませんでした。(今も外から見ている限り、そんな感じ。)

不思議だと思いません?

若かった頃の私も、そう思ってました。

ここに関して、左遷された私の再教育を担当してくれていたバブル世代のおじさんがこんなこと言ってました。

社内全員が納得して前に進めるプロジェクトなんかに価値ない。

そんな分野、そんな内容、間違いなく他社も目を付けてる。競争相手が多くて利益なんか出せっこない。

逆に「こんなのダメだ」って、みんなに批判されるような事業が当たると競争相手がいない分利益出せる。

当然失敗のリスクは高いけど、当たるとでかいんよ。

あまりにも堅実にいくと、確かに目立つ失敗は起こりにくいのか知らんけど、失敗確率としては100%になる。

この会社には、もっと「遊び」がないとダメ。

窓際部署のバブルおじさん

…そういうことなんですよね。

思えば、あの会社で今も利益を出している主力事業の多くは、田舎の町工場に過ぎず、今では考えられないようないい加減な組織運営をしていたころに育った事業。

それが、会社が急成長して上場企業になり、社会的責任が求められて失敗を株主から叩かれるようになると、

コンプラをはじめとした対外的な見栄ばかりに熱心になってしまい、こんな有様になってしまったと…。

これ、皮肉にも、

「失敗したくない」

という委縮した気持ちや姿勢が、実は長期的には一番失敗やジリ貧を招く…そういうことが分かるいい例だと思うんです。

守るものができたことで、ジリ貧の道を歩み始めるとは皮肉なもんです。

日本って国自体がそんな感じだなぁ。

…これ聞いて、若くて右も左も分からなかったころの私は、

「なるほどねぇ…」

と納得したの覚えてます。

そして、

「リスクを取ることの大切さ」

「リスクを取らないリスク」

ってものを、この言葉から学んだ気がしてます。

因みに、このおじさんですが、歯に衣着せずに上層部にモノを言うせいで冷や飯食わされてる感じの人でした。

だから私と同じ窓際部署にいたんですが、話してみるとかなり賢いんですよね。

結局、私はサラリーマンとしてはモノにならず、このおじさんの再教育は失敗に終わった形ですけど、

この他にも、このおじさんの金言は結構あって、今も私の人生にプラスの影響与えてるとは思います。

投資家はデータが揃ってから動いたのでは遅い

ダメサインを出す女性

この考え方って投資にも通じるものがあります。

「この株は安すぎる」

「この会社は有望だ」

そういう話を、万人が納得できるように説明するだけのデータや根拠があるのだとしたら…

私はそんな株には投資価値はないと考えます。

仮にそういう状況にあるのだとしたら、他の市場参加者も間違いなくそういう考えを持つでしょう。

そうなると、そういう状況が完成された時には、もう株価はかなり上がっていて投資妙味はなくなっているハズ。

実際、大手メディアの報道とか見ていても、株価がかなり上がってからポシティブなニュースが増えるような気がしています。

まあ、立場もあるし、いい加減な報道はできないってのは分かるんですけど、

結局、ポシティブなデータが揃ってみんなが納得いくポシティブな報道ができるだけの材料が揃った時には、もう遅いんだと思うんですよね。

結局、投資なんて

「他人の先回りしてなんぼ」

の世界。

情報収集して正確な判断下すのも大事ですが、それと同じぐらい…いや、それ以上に、判断下すスピードも大事なんです。

先日、私は

ファンダメンタル分析はザックリとするだけ

決算情報もマジマジとは見ない

と話しましたが、そういう行動を取るのには、こういう理由もあるんですよね。

「勘」の大切さ

当てずっぽうなんかじゃない!勘の凄さ

判断材料も時間も限られている中で判断下すとなると、勘や嗅覚に頼る必要が出てきます。

「勘」なんて言い始めると、大体においてイメージは良くありません。

アテにならない、当てずっぽう、再現性ない…そんなイメージがあるんじゃないかと思います。

でも、私は決してそうではないと考えます。

将棋の対局ではどう指していいのか分からない局面が必ず出てきます。プロ棋士の皆さんは日々、地道な研究や"頭の筋トレ"を積み重ねて対局の場に臨んでいますが、それでも研究とは違った展開になるものです。そんな局面は、「指運」が働くと言われますが、本当に強い人はこの「指運」が悪手にならないのです。

(中略)

分からないけれど何か一手指さなくてはいけないと思い本能的に手を出す。その、ふと指した手が当たっているのです。

(中略)

「指運」と言っても、それは運試しの「運」ではありません。以前の記事でも述べた「詰み勘」の「勘」と一緒で、「指運」を出せる土台がちゃんとできているから、当たりの方に手がいくのです。

(中略)

プロ棋士は実体験でそれを知っているから、対局の中でそういう局面に出くわしたときに指運で当たりの方に手を持っていくためにも、棋譜並べや詰将棋、読みの無駄、戦術の研究など様々な努力を積み重ねているのです。

羽生三冠「わからないからこそ読みより勘」その言葉の真意とは?|将棋コラム|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

正直、私は将棋には詳しくありません。ルール知ってる程度です。

強い人の凄ささえ理解できない私ですが、偶然見かけたこの記事は滅茶苦茶刺さりました。本当に良い記事だと思います。

私は脳科学者とかではないので、あまり責任持ってモノ言えないですが…

「勘」というと、理由や根拠なしに判断を下したと思われがちですが、恐らくそうではないと思うんですよね。

頭の中にあるデータベースをもとに、

理屈でモノを考えるのとは別のショートカット用の回路でも使って、

瞬時に脳が「こうだろう」と結論を下しているんじゃないかと。

瞬時に判断を下しているが故に、第三者にその理由や根拠を聞かれても答えられず、

「いい加減な判断しやがって」

となりがちではあるんですが、決して理由や根拠がないのではなく、ただ言葉にして第三者に伝えられないだけの話なのでは?と思うんです。

良く勉強してテストに臨んだ時、得意科目のテストの時、

分からない選択問題を勘で解いたら結構当たった

…そんな経験ある人も多いのでは?

そして、こういう、客観的な言葉や数字にして誰かに伝えることのできないような感性こそが、

ビジネスにおいても、

投資においても、

スポーツの世界でも、

もちろん、将棋の世界でも

…誰にも真似できない自分だけの武器になるんじゃないですかね。

実際、バフェットさんやソロスさんをはじめとした世界の有名投資家を見ていても、

それぞれ独特かつ筋の通った投資手法や理論をお持ちですが、手法や理論以前の話として、皆さん揃って嗅覚や勘が鋭い人が多いように思います。

それあってこその、彼らの驚異的なリターンだったりするんで、我々一般人が彼らの手法を猿真似しても同じリターンは出せないんですよね。

私の経験上の肌感覚ですが、視界不良の状態で6割でも勘が当たれば相当有利に働きます。

若い時にトライ&エラーすることが大事

それじゃ、何とか優れた勘を手に入れたいところ。

何にでも向き不向きは当然あるし、適正のなさ故に努力したところで限界があるケースもバンバンあるとは思います。

(私がサラリーマンできないのもそうだ)

だけど、引用記事にあるように、勘はある程度鍛えることができます。

勘を鍛えようと思ったら、とにかく頭のデータベースに厚みを持たせること。

そのためには…試行錯誤とトライ&エラーがやっぱり必要なんですかね。

私はあまりしてないけど、データベースに厚みを持たせるって目的であれば、ファンダメンタル分析だって決して無駄ではありません。

というか、投資とは直接関係のない人生経験とかも生きてくるっちゃ生きてくるような…。

そして、性格的に投資に向いてないなら向いてないで、試行錯誤の末に「向いてない」ってことを知る意味もやっぱりあります。

「向いてない」と感じたのなら、

インデックス投信積立に徹して「敗者のゲーム」に書かれてるような立ち振る舞いを徹底するのも良いし、

そもそも、「投資には一切手を出さない」って決めるのもアリ。

だけど、「向いてない」ってことが分かってなかったら、そういう立ち回りを徹底することができなくて、絶対に余計なことをやりよるんです。人間って。

だから、「初心者はインデックス積立て」と決めつけずに、一度は好きにやってみたら良いと私は思います。

あと、なくなっても良いお金で試行錯誤しても、あまり感性は鍛えられません。

失敗しても、「まあいいか」となってしまうから。

痛い思いするからこそ、人は成長するんです。

だから、ありったけのカネで試行錯誤した方がトレーニング効果は大きいんですが、かといって初心者が何千万円もいきなり投資に突っ込むとか自殺行為だとも思います。

このあたりが難しいんだよなぁ…。

だからこそ、若くて大してお金持っていないときに、なけなしのお金で投資家デビューして試行錯誤するのが私のお勧めです。

元々大して持っていないから、スッカラカンになっても知れているし、若いならまた働いて貯めれば良いだけの話ですから。

いい加減さと遊び心だって大事

そして、いい加減さや遊び心もとても大事です。

いい加減な判断をしたくないがために、データや根拠を集めて納得してからじゃないと動かないという人が結構います。

一見マトモな行動に思えるんですが、ここまで読んできたなら分かるでしょう?

こういう人がどうなるのか。

こういう人は、かなり高い確率で勝機を逸します。

確かに、データが揃った方が正確な判断はできますが、データ揃えたり自分の頭で検討したりするのには時間を要します。

投資でも、ビジネスでも、スポーツでも、何でもそうですが、基本的には先に動けば動くほど有利になりますから、時間をロスしてしまうと、正確な判断ができるのと引き換えに動いた時に有利な立場をどんどん失うんです。

真面目で堅実な人が陥りがちな罠だと私は思います。

そういや、私がインデックス投信積立を教えた課長も、

「何か月か考えてみる」

とか言ってたな。あの人も完璧主義者やから…。

冒頭の元勤務先の話もそうやけど、特に日本人って堅実さや正確さを重視するあまり、スピードや遊び心の大切さを見過ごしがちなんかなぁと思います。

私の場合は…

まぁ当然、何でもかんでも、根拠揃えずに勘で判断すれば良いってもんじゃありません。

ここらはバランスの問題ですね。

私なんかは、基本的には、

「正確な判断より、他人の先回りすることを重視する」

ように意識はしていて、

「5回勝負に出て2回は失敗していい」

ぐらいの気持ちで投資判断を下すことにしています。

ただ、そんな自分でも、相場が暴落している時は敢えて後手を踏むようにしていたりします。

人生経験や投資経験の中で、

自分の頭には思考力はあっても瞬発力やキレはなくて、

相場が急な動きしていて一瞬の判断誤ると死ぬような場面で動けばとロクなことがない

と、自分で分かっているからです。

何度も言うようですが、ここらは本当にバランスです。

ただ、

勘、遊び心、スピード

…日本人はこういうものの価値を軽視しすぎだと私は思うんで、ここらをもっと重視したらもっと良い投資できる人も多いんじゃないですかね。

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