アンティークコインのグレードと利回り
今日は投資対象としてアンティークコインを見た場合、どうお付き合いしていくのが妥当なのか考えてみます。
グレード(保存状態)と値動きの関係を解析した上で、アンティークコイン投資の攻略法を探っていきたいと思います。
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現状の傾向
傾向を探るために、まず取引のデータを解析してみたいと思います。
取引データ自体がほどんどなかったり、投資用というより趣味で取引されてるものも多いので、取引データのサンプルが一定程度取れて、投資用で買われているコイン2種をデータ解析の対象に選びました。
- 1847年 ヴィクトリア ゴシッククラウン銀貨
- 1937年 ジョージ6世 聖ジョージ竜退治 5ポンド金貨
取引データはアメリカのコイン鑑定機関であるPCGSのサイトに掲載されているオークションの結果から引用することにします。
実際はオークションを介さない取引がごまんとなされているはずですが、そこは悪しからず…。
1847年 ヴィクトリア ゴシッククラウン銀貨 取引データ
この銘柄はコイン界のGAFAM株と言って良いようなスター銘柄です。
コインは男性コレクターが多いので、このコインみたいにうら若い女性がデザインされた銘柄は人気になる傾向があるらしいです。
値動きはこんな感じです。
縦軸はオークションの落札価格、横軸は2000年1月からの年数です。
ここで一つ説明しておくと、コインにはPCGSとNGCという大手どころの鑑定機関が二つありコインを鑑定に出すと、真贋を鑑定した上で1~70までのグレーディングをして…要は点数を付けて返してくれます。
PR63とかPR64とかいうのは、鑑定に出した時についてくるグレーディングになります。
PRというのは金型が新しい時に作られるフィールド面が鏡面状のコインで、市場流通用ではなく贈答用や記念品として作られるもの…という意味で、その後の数字は状態のグレードです。
数字が大きいほど保存状態が良いです。
60台前半ぐらいだと、完全な新品ではないけど未使用かそれに近い状態で、コレクション的には良い意味でそこそこの品位と言えます。
コインのグレーディングについてはこのHPが詳しく書かれていますので、参考までにリンクを貼っておきます。
話を戻します…
グレードごとに解析対象期間の平均の年率利回りを計算した結果です。
グレード | 利回り(%) |
---|---|
PR63 | 6.50 |
PR64 | 7.13 |
PR65/65+ | 7.18 |
PR66 | 10.67 |
PR67/67+ | 20.15 |
グレードが高いほど利回りが高くなるのが分かります。
1937年 ジョージ6世 聖ジョージ竜退治 5ポンド金貨 取引データ
さて、こちらはイケメンが描かれたコイン。金貨です。
どっかで引用しても良さげなフリー画像ないかと探しましたが、見つからず。
画像貼れずすみません。コイン名で検索したら画像自体はいくらでも引っかかるんで、興味あったら見てください。
PR+CAM鑑定(カメオ:デザインのコントラストが強いという意味)のデータです。
同じくグレードごとの平均の年利を出すとこうなります。
グレード | 利回り(%) |
---|---|
PR61~63 | 4.01 |
PR64/64+ | 12.96 |
PR65/65+ | 15.20 |
PR66 | 28.24 |
これもヴィクトリアと傾向は同じですね。グレードが高いほどリターンは高いです。
解析結果から言えること
大きな金額を一度に投入した方が有利
値動きを見てわかる通り、希少性が高く状態の良いものほど高い利回りを叩き出す傾向があるのが分かります。
現状の値段で買いが一巡したら値段が上がるためで、希少性の高いものほど買いが一巡するまでの期間が短いからこうなります。
純粋にリターンだけ考えるなら、戦力の小出しは賢いやり方とは言えず、ある程度まとまったお金を一気に投入した方が高いリターンが得られます。
かなり良いものでない限りインデックスファンドに分がある
この解析対象期間の株式のリターンはどうだったのかと。それと比較してみます。
使用するデータはバンガード社が出しているインデックス型の米国上場のETF、ティッカーコードVTです。全世界の時価総額に連動するインデックスファンドのETFです。
これ(=世界株式)に2015年1月に投資していた場合、2021年2月11日現在のトータルリターン(分配金再投資なし+日本円建てベース)は平均年率7.44%です。
で、改めて上の2銘柄の年利を見てみると、
- ヴィクトリア銀貨→PR65以下であれば株式に劣後
- ジョージ6世 5ポンド金貨→PR63以下であれば株式に劣後
となっていることが分かります。
かなり状態良いものや希少品選んでおかないと、インデックスファンドに勝てません。
実物資産を株式と比べたら、実物資産は何かを生み出す訳じゃないんで劣後は当然の結果ではありますが。
じゃあどうすれば良いのか
株式と比べた時の本当の採算ライン
じゃあ、株式に勝てるリターン見込めるコイン買うにはどれぐらい必要なのかという話ですが、今回解析したコインだと、↓の条件です。
- ヴィクトリア銀貨→PR66以上
- ジョージ6世 5ポンド金貨→PR64以上
これを海外で落札して国内のコイン屋さんで売る場合、ざっくりとこんな感じで中間マージンが上乗せされます。
- オークションの手数料で×1.1~1.2
- 輸入消費税で×1.1
- +その他諸経費
- コイン屋さんの中間マージンで×1.3~1.5
なので落札価格にもよりますが、おそらくこの条件満たすヴィクトリア銀貨なら1000万円近く行くだろうし、ジョージ6世の方もコイン屋さんのHPとか見て回ってる感じだと、400~500万円はするんじゃないかという感じです。
おそらく、純粋にリターンだけ株式と比べるならばおおよそ500~600万円以上の物件を選べば良さそうですね。
ですが、金融商品であるインデックスファンドやETFは手数料や信託報酬がコンマ%オーダーですから、単にリターンで勝っているというだけでは手数料や中間マージンの差は中々跳ね返せません。
となると、もっと上。おそらく1000万前後~ってことになりそうです。
余談ですが、初めてコイン屋さんに行った時、どれぐらいの価格帯のものをお客さんに勧めているんですか?と聞いた時、
「1000万円からのですね…」
と言われました。その時は初心者にそんなもん勧めるなよ(怒)って思いましたが、案外店主の見立て間違ってなさそうです。
株式インデックス投信⇒アンティークコイン乗換え投資
まだ私も実践途上なんですが、これが良いんじゃないかと思うんですよね。
特に今金融緩和やってるし、世界各国の財政状況見る限り、借金溶かすには現実的にはインフレ策しかなく、簡単にやめられそうにもありません。
刷られたマネーが行き場を失ってありとあらゆる投資商品が値上がりするという傾向は当分続くはずで、株もコインも例外ではありません。
なので、
- ノーロード(買付・解約に手数料がかからない)の株式インデックスファンドを銀行預金代わりに利用して、市場の値上がりに資産価値が置いて行かれないようにしながらお金を貯める。
- 1000万以上になったら解約して希少コインを買う
ってやり方で効率良くリターン取れると思います。
ある程度お金ないとメリットが小さい
ただ、このやり方は資産規模がある程度大きくないと問題も多いです。
- 贈与や相続のこと考えたら、資産をある程度小口に分けた方が扱いやすいし節税にもなる
- 一度に大きな額投入するのはリスク管理上問題がある
要は、ある程度お金ないとメリットが小さくリスクや不便さばかりが目立つことになります。
また、巷では、投資でリターンを取ろうと言うより、預金封鎖や財産税への対抗策としてコインを利用する向きもあるようですが、日本も含めた過去の事例見ても、金融資産が5000万円ないような人はそれが実行された場合のダメージも軽微と思われるので、ガチガチに備える意味なんてほとんどないんだろうなと思います。
値動き緩やかでインフレヘッジになるという長所はあるんで、ポートフォリオに少しだけ混ぜる価値はあると思いますけどね。
だけど、以前の記事にも書きましたが、実物資産投資には相応のデメリットもあるし、超高額コインを除けば値動きも株式インデックスファンドに劣ります。
資産額が5000万円行かないなら無理にする必要ない投資じゃないかと思います。資産が5000万円超えてしまってる私は少しだけ持っておこうかなって感じですかね。