それでも、金投資はやりません!

お疲れ様です。窓際投資家です。

職場のおっさんたちと話していると、金価格の話になりました。

「金がごっつい上がってるらしいで!」

から始まり、

「あれだけは絶対に安全だよなぁ」

ということでその場の意見は一致している様子。

「多少下げることはあっても、半分になることは絶対ないやろ。」

なんて言う人までいました。

何言ってんねん。こいつら、全然分かってねぇな。

金には投資対象として一定の魅力があるのは確かです。

何だかんだ言って、

金は人類に財産として扱われてきた歴史が最も長いコモディティ。

それゆえ、

何かあった時に人が最後に信頼を寄せるのが金

って部分は間違いなくあります。

ただですね、だからと言って金へ投資することが投資の最適解だとはとても思えません。

私はやらんな。

今世紀入ってからのリターンが高いだけ

まず、金価格の推移がどうなってるのか見ていきたい。

過去50年のデータを年次データでプロットすると、こんな感じです。

これはドル建てのチャートですが、今世紀に入ってからのパフォーマンスが良いだけで、その前は20年ぐらいに渡ってジリ貧相場が続いていたのが分かります。

1980年にピークを付けてから2001年に底を打つまで、ドル建てで見れば半値まで値下がりしてます。

これ、円建てで見るともっとエグくて、同じ期間に円換算だと1/5にまで値を下げてます。

20年ジリ貧が続いて1/5になるってホルダーとしてはかなりきついですよ?

これ見ると、私の職場のおっさん達に対して「アホか」って一言言いたくなっちゃいませんかね?

投資の世界ではしばしばある話ですけど、

パフォーマンス良かった最近のデータだけ切り取ってワッショイしてんのってどうなん?

コモディティ投資は理論上のリターンが低い

これは金に限ったことではなく、モノに投資するコモディティ投資全般に言えることですが、金投資は理論上期待できるリターンがそもそも低いんです。

株式であれば、

投資家から集めたお金を使って人が何らかの生産活動を行うため、

それで利息や配当を払う原資を稼げるし、

そのお金が株主に払い出されずに貯めこまれたり再投資されたとしても、その分企業価値が高まって株価が上がります。

この理屈があるんで、株式投資は長期で見ると期待値の上ではプラスサムのゲームであり、市場参加者全員で勝組になることができる投資です。

債券も基本的な理屈は株式と同じです。

が…、債券は償還期限が来たらお金を投資家に返さないといけないので、株式に比べるとガッツリ投資に回せません。その分期待リターンが株式より劣ります。

嫌らしいのが、金利がインフレ率より高いと誰も消費しなくなって経済が死んでしまうため、国の政策上、金利<インフレ率となるように政策誘導されがちなこと。

このせいで、債券はインフレ率相当のリターンすら期待できないシロモノ。

金を始めとしたコモディティ投資になると、

投資対象がただのモノなんで、モノ自体が働いたりするわけじゃないんですよね。

なんで、これは完全なゼロサムゲームだし、長期で持っていてもインフレ率以上のリターンは理論上期待できません。

手数料やマージンを取られることを考えれば、若干のマイナスサムと言っていいでしょう。

なんで、理論上の投資リターンは、

株式 > コモディティ(金属、原油など) >債券

となります。

ここらが私が金投資を好きになれない最大の理由ですね。

債券はもっと嫌いですが

もちろん、これはあくまでも理論上の話に過ぎず、経済状況や国際情勢によっては、金が株式よりも高いリターンを叩き出す展開も中期的には十分にあり得ます。

人によっては、そして、状況によっては、そうなると事前に読めるケースもあるだろうし、そういう場合はその利益を取りに行くのは投資家として当然の行為…って話は当然あります。

だけど、何度も勝ち負けを繰り返して結果を均して見た場合、

或いは、

超長期でガチホした場合はですね…

必ずどっかで株式に敗北します。

さて、世界の株式時価総額に概ね連動するとされるMSCI-ACWIと金価格の長期推移を重ねてみると、こんな感じです。

このプロットはドル建てで、1987年の数値を1としてプロットしてます。(※MSCI-ACWIのデータは1987年以降しか記録がない)。

この40年弱で世界の時価総額が8倍強になっていますが、金はというと5倍強にしかなっていません。

明らかに株式よりリターンは劣後してます。

背景にある理論上の話が長期的にはボディーブローみたく効いてくるんですよね。

こんなもん買うなら、株式買いますよ。

財産課税対策としては役に立たない

もし日本が財政破綻でもして国民の財産を没収する流れになっても、
金の延べ棒を自宅金庫に持ってる人は助かるんじゃない?

金はリターンが低いのだとしても、一種の保険にはなるんじゃない?

…こういうことを言う人、そこそこいます。

何を隠そう、私自身も10年前ぐらいまではこう考えていて、資産の1割強を金に投資してた時期もありました。

だけど、色々勉強していくうちに、

この考え、

間違いではないにしても、

甘すぎるのでは?

と思うようになり、今では金への投資はやってません。

その理由としては…

金は資産防衛ツールとしては心許ない?
  1. 貴金属には支払調書制度があり、200万円を超える地金取引情報は税務署に行ってしまう。当局がその気になれば、少なくとも大口のものについてはいつでも没収できちゃう。
  2. 金の延べ棒の価値は誰が見ても分かってしまう。それ故に、申告評価額を圧縮する余地が全くない。
  3. 最悪の場合、ルール違反を承知で持って逃げることや隠すことも考えるべきだけど、延べ棒は大きくて重いのでそれが困難。誰が見ても価値が分かってしまうので、万一ガサ入れされて見つかれば一発アウト。

といったところだろうか。

まぁね、申告するルールあるのに隠すのはそもそもルール違反って話は当然あります。

ただそれって平時の話だと思うんです。

国民の私有財産を没収せんとあかんレベルにまで政府が追い込まれちゃってる時って、

戦争に近いようなかなり切羽詰まった状況で、もうそんな綺麗ごと言ってられる状況じゃないと思うんですよ。

こういう世紀末っぽい状況になると、案外金は使い勝手が悪いんじゃないかと。

まぁ、確率論から言ってそういう事態にはそうそうならないと思いますが…

私なんぞは、危機管理目的でこんなもの買うぐらいだったら、アンティークコインやカラーストーン持っていた方が良い気がしてます。

こういう投資対象の何が良いって…

世の中には、

高額で売ってても中古で売ろうとしたらタダ同然

なんてものが山ほどあるわけですが、

そういうものとの区別が基本ムリ

というところに価値があるんですよね。

そして、小さくて軽いので、持って逃げたり隠したりするのも容易なんですよね。

…はい。ということで、私は金投資はしません。

そんなもの買うぐらいなら、株式、アンティークコイン、カラーストーンを買います!

ということで。

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