日本国債のショートってどうよ?
こんにちは、そしてこんばんは。窓際投資家です。
ここ最近、外国人投資家が日本国債にショートを仕掛けているようです。
日銀様に喧嘩を売るとは中々の度胸だと思いますが、これについて思う事をダラダラ書いていきたいです。
度が過ぎるインフレに対処しだした欧米
私はいつも言ってますが、大きな目で見れば先進国共通の話として
金融緩和的な政策(金利を下げて世の中へお金を供給する)を繰り返しつつ、マイルドなインフレと共存しないとやっていけない
と思ってます。
これをやらないと、経済が死んだり国が財政破綻したりってことになりかねないから。
もっと言えば、現代社会の経済って、みんなに借金させてでも消費させまくることで成り立っているから。
そして、どこの先進国も政府自体が借金漬けだから、ある程度インフレで借金を溶かす必要もあります。
ただそれも、インフレがマイルドな形で制御できてることが大前提です。
今のアメリカみたいにインフレが酷くてかつ景気が悪くないなら、中銀のバランスシート縮小や利上げもアリだろうし、実際今の欧米の中銀はそう動いてます。
まだ金融緩和を続ける日本
日本の場合、元々政策金利(短期金利)なんてとうの昔からゼロ金利でしたが、この10年は長期金利までもを抑え込むために日銀が買いオペでお金を刷っては国債を買い支えてきました。
これを、他の国が中銀のバランスシート縮小や利上げに動く中未だに続けているわけです。
そのせいで為替が円安側に振れ、ちょくちょく金融政策への批判も出てきていますね。
一応、ここで投資初心者を意識して念のために金利がどう決まるのか説明しておきます。
中級者以上の投資家の人には釈迦に説法でしょうから、次章まで飛ばして読んでください。
まず、政策金利は各国の中央銀行が決める短期金利です。
長期金利については原則は、短期金利の影響を受けつつ市場原理で決まります。
例えば、10年後に100万円を償還してもらう権利って100万円で手に入る訳ではありません。
債券市場で債券が取引され、そこでの需給の関係で90万円になることもあれば、95万円になることもあります。
こうやって決まるその時々の債券価格と償還額の差額が金利で、これを償還までの残り年数を勘案して「利回り年率何%」みたいな言い方をするのです。
…というのが原則だったのだけど、リーマンショック以降、世界各国の中央銀行が禁じ手に打って出ます。
「買いオペ」と呼ばれる行為です。
これは新たに通貨を発行して市場に流通している長期債券を買い取り、世の中に流通するお金の量を増やす行為です。
市場で長期債券を買い支えることになるんで、債券市場での長期債券の取引価格は上がり、償還額との差が縮小。
この結果、長期金利は下がります。
これをせっせとやって短期金利だけでなく、長期金利までもを無理やり押さえつけてる訳です。
当然、金利が下がれば企業や個人がお金を借りやすくなり、借金漬けの政府としては金利負担が軽減される効果はあります。
米国だって欧州だって、リーマンショック後やコロナ対応でこれをやりまくりました。
やりまくったことが一因となり、今酷いインフレに見舞われています。
日本はというと10年以上やったけど、大して効果がなかったんですよね。
ここで余談ですが…
この時債券を買い支える通貨をどうやって発行するのかと言うと、昔は国が金を保有してそれの裏付けがないと発行できなかったのですが(金本位制)、今は「発行します」の一言で発行できてしまいます。
言ってみたら、子供がおもちゃのお札をコピー機で増やしちゃうのとある意味何も変わりません。
だから私は通貨ってのもを絶対に信用しないし、人が欲しがるモノやサービス生み出す組織という裏付けがある分、株の方が長い目で見れば安全だと思うんですよね…
まぁその話はちょっと横に置いておきましょうか…。
国力衰退で金融緩和策の出口が見えない
日本だけなぜまだこんなことするのかと言うと、理由は非常にシンプルで、米国とかよりずっと経済が悪くて政府の債務残高GDP比も高くて、金利上昇に経済も国の財政も耐えられないからです。
言い方を変えると、日本はある意味で最もインフレを必要としている国だとも言えます。
だから、日銀は別にそこまでおかしなことやってる訳じゃないと私は思います。
国や経済クラッシュさせるわけには行きませんから、安易に「金利を上げろ」なんていうのは暴論だと思いますよ。
ただ、他の国が金利を上げている中、通貨の流通量を減らしている中で、日本だけゼロ金利&買いオペ続ければ通貨安招くのは必定。
黒田さんは
「カネ刷って無制限に国債を買う」
と宣言してますが、本当にそんなことしたら、どっかで日本円の信用が地に堕ちて外国からモノが買えなくなります。
黒田さんも分かってはいるだろうけど、他の国が金融引き締め(中央銀行が買い取った債権を放出&政策金利を上げる)やってる中で本当に「無制限に」国債を買い支えることなんてできないでしょう。
仮にこの状況がずっと続くのであれば、まぁ…どっかで堤防は決壊しますよね。
外国人投資家が日本国債を空売り
とまぁ…前置きが超長くなってしまいました。ご容赦を…。
そうやって、難しい舵取り迫られるんやろなぁとは思うけど、こんなニュースがありました。
海外勢と日銀の攻防激化 緩和修正めぐり思惑 混乱の国債市場
日本国債を取引する債券市場が大混乱の様相を呈している。
日銀による大規模金融緩和策の修正をにらんだ海外投資家が国債に投機的な売りを浴びせ、日銀が必死に買い支える構図。16日から2日間の日程で開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、15日には国債の先物取引が一時中断、両者の攻防はヒートアップしている。
15日の債券市場は異例の事態となった。国債の先物価格が前日に比べ2円以上も急落し、2013年4月以来、9年2カ月ぶりの下げ幅を記録。値動きの激しい相場への注意を喚起するため、日本取引所グループが取引を一時中断した。
売りの主役は海外投資家だ。日銀は現在、長期金利の指標となる現物の新発10年物国債の流通利回りを0%程度に誘導し、上下0.25%程度の変動を許容している。だが、世界的にインフレが加速する中、欧米の中央銀行は積極的な利上げに転じた。海外投資家らは、日銀も緩和策の修正を余儀なくされるとの観測から日本国債への売り圧力を強めている。13日には長期金利が日銀が許容する上限を突破、0.255%まで上昇(債券価格は下落)した。
これに対し、日銀は特定の利回りで国債を無制限に購入する指し値オペや臨時の買い入れを断続的に打ち出し、金利上昇の抑え込みに躍起となっている。15日には指し値オペの対象を拡大し、海外勢の売りをこれまで以上に強くけん制した。
(以下略)
引用:国債市場 海外勢と日銀の攻防激化 – Yahoo!ニュース
う~ん…中々面白いことやるなぁ…!
確かに、日本の場合、もう国債価格は上がるところまで上がってて、上値余地と言っても知れてるでしょうね。
10年もの国債の利回り0.25%を死守するとか言ってるもんなぁ。
これ以上、金利下げようがない。
そう考えたら、空売り仕掛ける側としては、踏み上げ食らっても知れているということです。
ただ、その一方で、窓際族の考えとしては、基本的には中央銀行にケンカを売ってはいけないとも思うんですよね。
個人投資家…というか、機関投資家でも、喧嘩を売る相手としてはあまりに手強い。
そういや、2012年にユーロ売り・スイスフラン買いをしてたイナゴFXトレーダー達が、スイス中銀の為替介入の一撃で追証&借金まみれになってガチで首吊るやつもいた…なんて事件もあったなぁ…。
なんで、絶対に中央銀行なんかとは喧嘩しないことです。
以上のことを踏まえると、今外国人がしてるように、ダメ元で日本国債にショート仕掛ける手もあるとは思うんですが、やはり現状ではそう簡単に日銀の指値堤防は決壊しないんじゃないかと思うんですよね。
ただ、今後、日銀が防衛ラインを下げたり、指値堤防が決壊したりする兆候が出てくる可能性はあります。
そうなったら、私もショートをしかけてみようかなぁと思いますね。
勤務先の親会社の社債をショートする窓際族…中々シュールな絵ですね。